「弁証法」ー(「地平の融合」ー「オートポイエーシス」)ー「最小情報原則」

思想の展開

はじめに

今回は、2つ前のblogで「「弁証法」ー「地平の融合」ー「オートポイエーシス」」、に「最小情報原則」を加え、別の側面から工学的手法を検討致します。新しい言葉として「最小情報原則」が登場しました。まずこれについて説明し、その後、これらの思想の位置付けについて考察致します。

最小情報原則

最小情報原則は私は20年ぐらい前に知った方法で、その時Intelが使った方法だと聞きました。個人的に何度も使っている方法論です。これを書くにあたって、検索したのですが、でてきませんでした。AI Copilotもこの言葉を知らず、「公にした考えでなく、Intelの社内で使っていた言葉でないですか」、と言った回答でした。ということで、今となってはこの言葉の由来がわかりませんし、この言葉で良かったのかということもはっきりしません。一般的ではないようです。私が学んだ最小情報原則は次のような内容でした。
1.思いついたことで、やれるだけやる。
2.そこに問題があり、進まない状態になれば、それまで進めてきた内容は全て捨てる。何故できなくなったのだろう、ということを考える必要はない。
3.全く新しく、別の方法を新しく建てる。
4.素早く繰り返す。
というものでした。
通常新しく何かを始める際には、ある程度過去の例を調べ、何が良くて何が悪いかを分析し、取るべき道を決めます。これを完全に否定した方法です。私自身は、この「最小情報原則」はとても好きです。思いついたことでいきなり作ります(これが最小情報ということです)。そしてもう一つのポイントは、早く回すということです。この点デザイン思考と重なります。これは最初失敗することを前提にしています。そして実際1, 2度は失敗します。しかしこれを3度ほど回すと、新しく入ったその分野が、だいたいどういうことで、何を問題にしているか、早く掴むことができます。現状その分野ではどうなっているかは、これを体験した後で調べます。この段階では、何を調べればよいのかがよく分かって調べることになります。この手法の面白いところは、思いついたことで作れるだけ作って、進めなくなったら捨てるということです。失敗の原因は何か、どこを改良すればよかったのか、というようなことを振り返り継ぎ足すことは行いません。「私の使った観点そのものが間違っていたからだ」と全否定し、別の観点を探します。

最小情報原則の例

例えば私はMAX/MSPを使っていました。音楽をメインにしていたからです。映像を扱うようになりましたが、MAX/MSPでも扱えるのでそうしていました。しかし描く映像がシミュレーション的ではなくなると、使えなくなってきます。ここを工夫して乗り越える手法もありますが、そうせず、TouchDesignerを覚えることにしました。私はblenderも少し使いますが、それもまた同様の場合が生じたからです。また私は元々ハードウエアのエンジニアです。ですのでオペアンプやマイコンで回路を組むことが多いですが、処理が複雑になるとかなり難しくなります。この場合もTouchDesignerで信号処理することに変えました。このようなことは躊躇しますが、行ったほうが結局はやく解決できます。

他の方法との比較

「最小情報原則」と他の方法とを比較すると興味深いことが分かります。これが今回のblogの主張点です。
「弁証法」は理性で追及していく代表として述べています。これは正・反・合を繰り返すので、過去行ったことが正しい道であった場合に成立します。しかし大分先へ進んだ後、違うのでは?と思った時、戻るすべがありません。つまり方向性が違っていた時に修復できません。一方「地平の融合」や「オートポイエーシス」は前の状態を加味して今を作っていきます。前の状態を振り返ります。少し過去を今を使って解釈し直しているのです。特に「オートポイエーシス」はフィードバックですから、前の状態に対してフィードバックを掛けながら進みます。つまりこれらは局所的に修正が利く方法です。しかし最初の観点が違ってました。というような場合の修正はできません。過去を引きずりながら今を作りますが、その過去は少し前のことです。「最小情報原則」はやってきたことを全否定し、一番最初の位置に戻ります。観点が違っていたということに対して、対応できる考えです。だからこそ早い段階でこれを行い、方向が決まった後は、「地平の融合」や「オートポイエーシス」的に進め、確実な問題では、「弁証法」的に進める、といったことが有用になるのです。「最初から良く調べてやりましょう」、と言ったりしますが、知らないことをする場合、良く調べることができません。2025.07.18のblog「「環世界」と「暗黙知の次元1」」の最初で、「メノンのパラドックス」を紹介しました。「探そうとしているモノを知っているなら探す必要はない、探そうとしているものを知らないなら探せない」というものです。この時は発明・発見の検知から述べましたが、調べる場合も同じです。「何を調べればいいのか知っているなら調べる必要はない、調べようとしているものを知らないなら調べられない」ということです。「最小情報原則」は、私の知っている範囲でのことですが、この「メノンのパラドックス」を破る可能性のある方法です。何故そこを破ることができるのか、それは「理性」に依存せず「直観」によるからです。思いついたことを素早く実装することを繰り返すのは、「直観」を磨くためです。

表紙の画像について

表紙の絵はblenderで簡単に描いたものです。梯子と階段、そして螺旋階段を描いています。どんどんと上へ登って行く方法を考えました。梯子は作製が簡単で登っていけますが、不安定です。この場合、梯子の下側に支えを付けるなどして伸ばすことができますが、長くなる程不安定になることは変わりません。そこで梯子を安定にする方法を捨て、階段を作ることにしました。階段は安定に長くできます。しかし、長くすると斜めですから場所を取ることになります。それなら、途中で「く」の字に曲げる等することが考えれますが、その場合でも、階段を支える場所が必要になります。この場所の問題が解決できないので、この作製も途中で打ち捨てます。次は螺旋階段を考えました。狭い場所で高く安定に作ることができます。このように根本的な問題に出会う場合、そこから継ぎ足して何とか続けようとせず、違う方法で最初から作り治し、上へ登ろうとしていることを表しています。

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