Copy:生物の動きの模倣

copy

はじめに

Monogokoroでは生命の様に見える映像を検討してきました。オリジナルは、ポストモダン思想とオートポイエーシスの自律から考えた「擾乱を伴う反復系」です。これとポテンシャル分布と合わせて使う手法も提案してきました。その他、代謝に注目した例(実際に代謝があるわけではありません。食べて大きくなり、餌がななると小さくなる、様子を真似たに過ぎません)も考えました。今回はもう一つの方法を提案致します。以前に「Copyとインスタンシング」使うプログラムを扱いました。しかしこの時は構造や線形操作による予測不可能性に注目しており、生物的に見せることを意識していませんでした。2025.09.08「構造主義の観点・・・」, 2025.09.06「線形操作で生じる予測不可能性」がそれです。これらの元になったのは、2025.05.31「オブジェクト指向プログラム・・・」です。この時の鏡の画像の作りか方が本件の源流です。作製中に何か生物的だなと思える画像が作れる場合があったのは覚えています。一方別件で、Touchdesignerを使ってローポリの画像作製を練習していました。この例もCopyとインスタンシングを使うプログラムでした。そしてそれをnoiseで動かしてみると、これも少し生物的に見えました。この例は後で示します。これらのことから、「Copyとインスタンシングと揺らぎ」の組みあわせは、「生命の本質的な何かに触れているのではないだろうか」、と思いました。そこで、「Copyとインスタンシングと揺らぎ」の系で、生物的なオブジェクトを作製してみることにしました。

ローポリの例

ローポリの木を大地に作製する例のYouTubeを紹介します。ローポリの映像はblenderが得意とする画像です。Touchdesignerを使っても同様に作製できることに興味を持ちました。「https://www.youtube.com/watch?v=3UpCd9BfUL4」
「https://www.youtube.com/watch?v=1Q_ybS7pQfQ」
この動画を参考にして作製した画像が次です。

この画像がYouTubeの例と違っている点は、大地の平面を球に変えた点です。これに伴ってYouTubeでは2種類の植物を生やす場所をsprinkle SOPを使って分けていますが、group SOPで分けました。これは球の場合は木を生やすのに法線方向が必要となるからです。sprinkle SOPは点ですので法線の情報がありません。group SOPは球であるsphare SOPの法線情報を保持するからです。geo COMPにインスタンシングする際に、法線もインスタンシングすれば球に対して垂直に生やせます。木と大地にnoiseを加えた映像を次に示します。

人によると思いますが、これを見て意外に生物的だなと思ったのです。このようなローポリで生物を意識していない映像でも感じれるなら、生物的に見せる本質的な要素が含まれているかもしれないと推察しました。この映像の作り方は2種類の木をつくるのに、copy SOPを利用しており、それをインスタンシングする手法です。これは、上に挙げた以前のblog「構造主義の観点・・・」や「線形操作で生じる予測不可能性」と同じです。そしてnoise SOPにより揺らぎを与えています。

「Copy+インスタンシング+揺らぎ」の構造

それでは、この組み合わせで生物っぽく見せようと作製した映像を見ていただきましょう。

左側が正面斜め上から見た映像で、右側が真下から見た映像です。生物っぽい気持ち悪さが出ていると思います。最初の動画の触手のような枝状の部分は、blenderによって作製し、objファイルでTouchdesignerに取り込んだ形状です。「擾乱を伴う反復系」では、生命あるいは細胞といった感じを持っていましたが。これは生物という印象です。構造が3次元化される点や複合的な映像がそうしたイメージを持たせるように思います。これらの例で「Copy + インスタンシング+揺らぎ」が生物を表す特徴だと決めるのは早計ですが、同じ形状をコピーして使いまわすというのは、確かに効率的な作り方です。フラクタルや植物の形状を創るL-systemは、再帰的なCopyの繰り返しで作製しています。生物との共通点もあるように思います。
この節の最初の映像のプログラムについて簡単に述べておきます。2番目の映像は触手の替わりに、最初の節の木の一部を使ったモノです。ごく普通のプログラムです。簡単な構成で複雑な映像が作れることにメリットを感じています。

球を上半分にして扁平化した図形を作ります。blenderで作製した触手を扁平化した図形のポイントにコピーします。これで扁平化した図に触手が生えた図形が作れます。これを再度扁平化した図形を拡大した図形のポイントに貼り付けます。2回目の貼り付ける方法は、インスタンシングです。noise SOPでゆらしたり、触手のサイズを可変にしています。あえて特徴的な所を上げるとすると、扁平化した図形をcopyにも使っているし、インスタンシングの元にも使っている点です。

まとめ

今回のプログラムを作製していて、生物はCopyによって作られている側面を持つことを再認識しました。細胞分裂して様々な部位を作っいくといったこともありますが、同じものをある構造に配置することで、何か有用な機能が発揮できるという作り方があるのではないかと思いました。例えば弁のようなモノができたり、収縮を繰り返すモノができたり、と言ったことです。これまで生物の動きをまねようと、「擾乱を伴う反復系」や代謝に注目した例を作製してきました。これに今回「Copy+インスタンシング+揺らぎ」を使う例を加えることができました。例を作製することで生命観が広がっていく気がします。ただCopyを繰り返す場合、L-systemでもそうですが、直ぐに膨大な数になります。このためパソコンへの負荷が大きくなります。実際の生物はそうしたことがないように見えます。何か大きな違いがあるように思います。

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