2025.05.23のblog「コンピュータに宿る非線形性1、ディスプレイスメント」では、blenderのノイズテクスチャー+ボロノイテクスチャー+ノイズテクスチャ及びディスプレイスメントの構成において、関数の非線形性により、思いもよらない画像が生成できることを述べました。この時は画像でしたが、今回は動画の映像について検討いたします。そして非線形で作る映像の応用について次回のblogで検討したいと思っています。
まず、次の画像を見てください。
この図の作製方法を例に解説致します。「コンピュータに宿る非線形性、ディスプレイスメント」での説明と基本的に同じですが、少し調整することができるようになりました。非線形現象は予測不可能性を持ちますが、全くコントロールができないというわけでもありません。blenderのシェーディングエディターの画面を示します。
構成として、ノイズテクスチャー+ボロノイテクスチャー+ノイズテクスチャ及びディスプレイスメントがあります。カラーランプは映像の色を変える働きです。ノイズテクスチャーとディスプレイスメントの間にも入れる場合もあります。この場合、ディスプレイスメントは色を高さに変える変換ですから、カラーランプで色を変えることで高さ調整が可能になります。レンダープレビューというタイプで表示した図が最初の図です。これは光や陰の計算によって立体的に見せるシェーダーの技術を使った表示です。このためやや時間がかかります。最初のノイズテクスチャのパラメータであるスケールを10から0.6まで変えながら450フレームを計算したのが以降の動画です。一つの動画に5-6時間かかっています。パラメータを変更した2つの動画を示します。
パラメータを簡単に説明すると、細かさを小さくし空間性を上げると古墳のように形状がはっきりします。オフセットを上げると城壁のような形状とそうでない平坦な部分に間隔が広がっていきます。スケールは特に重要なパラメータです。上の2つの映像を注意深く見ていると、通常の線形な図形では大きさが変わるだけですが、この値が大きいと図形は縮小され、高さ方向がざわつくような変化をします(時化と呼んでおきます)。またスケールの値が小さいと図形は拡大され、高さ方向の変化は落ち着きます(凪と呼んでおきます)。これは非線形性を示した現象のように思われます。細かさのパラメータでは最初の映像は0.1と細かく2つ目の映像は3.5と大きい値です。そこで、細かさが小さいと映像がなめらかになることが分かりました。そこで、スケールと細かさを組み合わせて変化させることを考えてみます。時化の状態の時、細かさのパラメータを大きくして、凪の状態の時、細かさのパラメータを小さくすると、恐らく時化と凪はさらに強調されるはずです。そこで、スケールを10から0.6に,同時に細かさを3.5から0.1に同時に変えて計算することにしました。その映像を次に示します。
予想どうり、最初は凸凹が激しい時化の状態ですが、319frameから突然なめらかな曲線となり凪の状態に遷移しました。大げさに言えば相転移したような印象です。そこでこの現象を「映像の相転移」と呼ぶことに致します。私はこの現象が今後の検討に役立つものとなるのではないかと期待しています。2025.05.19のblog「「量と質の変換」・・・」で量が質に変換させることを述べました。植物を増やしていくと動物の毛のように感じるようになるというモノでした。そして今回、非線形性を利用してスケールと細かを変えていくと、凸凹からなめらかに相転移する現象を見つけたわけです。これらは独立に表現でき、2つの軸を構成できるのではないかと思っています。「擾乱を伴う反復系」と合わせて状態変化を作っていきたいと思っています。
これらの動画を見ると、なんとなく自然というか、生命というか、ただの乱雑さではありません。これには4つの理由があると思います。一つは自然や生命がそもそも非線形性を持っている点で、共通性を感じるためでしょう。2つめは、ボロノイは細胞のような形状を示す図形ですから、そこから変形された図形も自然のように見える。と言うこともあるでしょう。3つめは、作製者である私が、自然ぽくなるようにパラメータを調整しているからです。これはオブジェクトである映像と私との間でのフィードバックによってなされた結果です。一つ前のblog「オブジェクト思考プログラムと存在論の交差点」では、「プログラムは閉じており、閉じだ道具を使って如何に開いていくか」を問題としました。人は在る現象を見て、これならこうしたらいい、これに活用できる、等と物語を作っていけます。これが開いているということでした。ですから人は開いています。コンピュータに宿る(プログラムに宿る)非線形性は閉じたプログラムから人に開いた状態を誘っている、あるいは誘発している状況と言えるでしょう。これを見て、イメージを作り人が調整します。そして別の何かと結びつけ、応用を検討していきます。もう一つは最後の動画についてになります。自然界には相転移の現象が複数あります。例えば、液体が気体になるとか、磁石を加熱するとある温度で磁性を失うとか、温度と圧力により非結晶から結晶へ変化する等の現象です。しかし通常の人工物の中でよくみられる現象ではありません。ですから、あるところで性質が変わる現象を見ると、自然の得意な現象にであったように感じます。
このblogの表紙の画像は、ノイズテクスチャのオフセットの値を0.2にした場合の画像です。オフセットを0に近づけると島と島との間の道のような部分がなくなっていきます。これもある・ないの状態が作れます。
今回の「映像の相転移」の現象を今後活用していきたいと思っています。
コメント