Monogokoroというサイトのマークを考えようと思い、表紙右のマークを作りました。文字を対称に配置しています。「初期の人工生命のConwayの活用について」のアイキャッチ画像も対称配置を利用しています。そこで、配置と関係の深いゲシュタルトでよく出てくるプレグナンツについて述べたいと思います。ゲシュタルトやプレグナンツは人の特性です。もしかすると現在では科学的な理由もわかってきているのかもしれませんが、私が学んだころは、現象としては知られているが、原因はわからない、という状態でした。つまり、人はそういう性質を持っている、と言ったことでした。私はこの性質を文様に活用することが多く、その文様の呪術的な力というか、神秘性というか、そうしたモノに惹かれています。過去にプレグナンツの活用例を考えたことがあるので、今回はそれを紹介したいと思います。ゲシュタルト自体についても述べたいことがありますが、これはまた後程ということに致します。
プレグナンツの法則というのは、対象を一塊のグループとして捉える傾向をいいます。例としてモノごごろのマークで説明致します。図1を見てください。パッと見には図1(b)の塊でとらえる人が大半だと思います。そのうち、あー、この「モノごごろ」という塊を反転しているんだ、というように、図1(c)に気づくと思います。このように人は、モノとモノの隙間とか、近さ、大きさのバランスとかで、パッと見た時に一塊ととらえる性質を持っているということです。これは文化的な背景とは違います。図1(b)のように、直観的に分割するグループ分けがプレグナンツです。今回のブログの書き出しは、「Monogokoroというサイトのマークを考えようと思い」と初めていますが、「Monogokoro」、「と」、「いう」、「サイト」 ・・・と言ったように、分割して認識しているわけですが、どこで切るのか、一塊はどこまでか、ということは、日本語に親しんでいるから分割してわかるわけで、文化的背景が必要です。こういうのはプレグナンツとは言いません。文化的な背景で分割が決まるという現象自体も面白く、こうした現象をどう活用すればいいのか、という観点があると思います。モノごごろのマークでいうと、最初プレグナンツが働き、その後、文化的な背景で「モノ」、「ごころ」という単語を知っているので、分割の仕方を変えて見ることができるというわけです。プレグナンツの性質が何故生じるのか、これを如何に活用するのか、という方向はもちろんあります。しかし、これとは別に活用したモノを見ることで、何だこれは、それが変化して、オー、と言った気持ちを誘発する方向があるわけです。私は後者に関心があります。
プレグナンツと関連していっしょに考察するとよいと思うことに、ベイズ推定があります。ベイズ推定は現在では自由エネルギーの原理と強く結びついており、人間の本質はベイズ推定することだ、なんて言われるぐらいになっています。人間について考察する際の最重要案件です(残念ながら私は自由エネルギーの原理を理解できていません。難しすぎます)。ここではプレグナンツとの関係だけを述べたいと思います。ベイズ推定は、少ない情報で直ちに今何が起こっているか、高速推定する方法です。その背後には事前情報というのが必要です。人は常にベイズ推定しています。例えば普通に歩いている時も、地面がどうなっているのか、といったことを常に推定しています。だからこそ、滑った時に、オットット、と驚くのです。つまりシミュレーション(推定)どおりなら意識に挙げる必要ありません。推定と違ったから、どうしたのだ、と意識に挙がってくるというわけです。情報としては、目の前の情報だけで推定しているわけですが、この背後には、濡れた床はすべりやすいとか、テカテカならすべりやすいとか、体験による膨大な情報が背後に潜んでいるのです。この背後の膨大な情報は、工学では現在さかんに行われている機械学習とかディープラーニングとかと結びついていきます。人はベイズ推定を使って少ない情報で効率的に判断しているわけですが、その背後には学習による蓄積があるのです。このあたりも非常に興味深い内容です。どういう塊で区切りるかという直観的なプレグナンツと、文化的背景による分割、そしてベイズ推定、ディープラーニングが密接にかかわっていることは想像できるかと思います。例えば、クルマという塊で区切れるから、またそれがどんなモノか知っているから、それが近づいてくるということは何がおこりそうか推定できるのです。如何に分節・分解するかは人に関係する大きな問題でまた取り上げたいと思っています。星空を見上げ多くの星が見えたとしても、この星とこの星で、双子座だとか、北斗七星だとか、分節の仕方をしらなければ、無数の光があるだけで星々の伝説や物語は生まれてこないのです。
この区切り(分節)を技術的にあいまいにするようなことをすると、何だろうという推定が自動的に生じます。そして次第にわかると、「あー、そういうこと」となるわけです。モノに対して、なんだろう、こうなのかと思ってみる、それを参考にまた見る、するとこうかもしれない、と見え方が変わる、このことが、人とモノとのフィードバックが生じているということなのです。つまり、人の持つプレグナンツ、文化的背景、ベイズ推定の性質を活用すると、その境界を曖昧にすることで、人はかってに推定するという性質を刺激して、人とモノとのフィードバックが生じるというわけです。これはおもしろいテーマだと思います。またこれは「抽象」を扱う場合と似ています。一つ前のブログ「初期の人工生命Conwayの活用について」で示したキャッチアイ画像も、対称性を利用して配置しております。この図では図形がかなり複雑なので、縦横のラインを入れて推測しやすくしております。人は水平・垂直のラインを直ぐに見つけれる性質があるようです。これが基準ということになるのだと思います。水平垂直を直ぐに見つけれるようになった理由に対して、進化的にそうなった、あるいは重力のある地球で育ったからそうなった、など、こうしたことも議論があるようです。この図はより抽象性が高くなっています。この「抽象」という概念についても、そのうちに扱いたいと思っています。
さて、次にプレグナンツを変化させる方法について考えてみます。図2に典型的な例を書いてみました。(a)はblenderでよくでてくるスザンヌのというサルの形状です。これをまず2×2の対称図形を作ります(2×2の対称図形というは例えば図2(a)を囲っている4角形の右の縦線に対して対称にした左右を反転したスザンヌの図形を作り、さらにこの2つスザンヌを、今度は四角形の上の水平線で上下反転した図を作るといったように、2回の反転操作をすることです)。これをもう一度2×2の対称図を作ると、図2(b)ができます。図2(a)のスザンヌは中央にあり、4画の囲っている部分のどこにも接していません。このことが、図2(b)のように形がそのまま、反転しながら繰り替えさせる結果になります。一方、図2(c)はスザンヌが右の角の方向に動いているため、右に縦線と上の横線に接しています。この状態で同じ操作をすると図2(d)のように、抽象的な絵となり、一塊となる形が(b)と違ってくるのです。これはスザンヌが外枠の四角に接しているかどうかということで決まります。図2(a)から(c)にスザンヌが移動する過程では、この一塊の図形も変わっていくわけです。このように図形をどう動かし、それが周囲にどのように接するかでプレグナンツが変わってくると同時に、抽象性が加わります。スザンヌの部分が動画であったとすると、動画の動きによって、相当に抽象度とプレグナンツが変わった映像が得られます。このあたりを詳しくかいたのが、特開2023-079245 文様生成装置, 特開2023-183882 表示装置、になります。特開2023-183882では人とディスプレイの間の距離によって、対称図形を何回組み合わせるかを変えています。つまり、遠くでは2×2の対称図形を2回作っており、近づくにつれて回数をさげていき、直近になると、そのまままの映像が映る例を述べています。遠くでは抽象的でなんの映像かわからないが、なんとなく綺麗な映像をしており、近づくにつれて、抽象度が下がり、直近では商品の映像が映るといったことです。なんだろう、という感じから(これがベイズ推定の状態)、あーカバンだったのか、とか、クルマだったのか、というようにして印象付ける方法を述べています。近づくにつれて変化してわかってくるということに、人とモノとのフィードバックを作っているのです。
最後に3次元空間に動く球を無数に作っておき、それをカメラで見ることで2次元化し、それを上述と同様に2×2の対称操作を2回行った場合の動画を示します。どんどんと図形が変化し、抽象性と一塊ととらえることができるグループ(プレグナンツ)が次々と変化する様子がわかります。これはTouchDesignerによって作製したものです。在る時間を止めると、その時の文様が得られことになります。この方法では。球の代わりに別の形状を使ったり、数を変えたり、動きを止める時間を変えることで、事実上無限の文様を作ることができます。本件のキャッチアイ画像は3Dの状態を示しています。これをカメラでとらえ2D化します。それを輪郭抽出して2×2の対称配置を2回繰り返したのがこの動画になります。動画の音楽はSoundrowによるものです。SoundrowはAIで音楽を自動生成するサイトです。が作った「徒然:音楽曲名 Varying duration」や「初期の人工生命Conwayの活用について」で示した音楽と随分と違います。この違いについてもそのうち話したいところです。
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