はじめに
これまで書いてきたblogのほとんどは、オブジェクトを外から観る視線でした。2025.12.17のblog「パーティクルとポテンシャルによる移動経路設定の基礎検討」で粒子がポテンシャルに衝突し阻まれる図はその典型です。しかしそのblogにあるように、斜め上から観る映像も作製しています。この時上から客観的な視線だけでなく、オブジェクトの視線からポテンシャルの空いている場所を探す必要がある、と感じました。そこで今回、オブジェクトに視線を移す方法を検討します。実際行ってみると、作製した映像は「躍動感」の点でこれまでと劇的に違います。主観的な視線、動的なイメージを強く主張してきます。どこから観るのかは本当に重要だなと感じた次第です。視線を動かす手法については、「ビジュアルクリエータのためのTOUCHDESIGNERバイブル, 著 河村健一 他2名, 誠文堂新光社」のstep6 「カメラを使ったアニメーション表現」を参考にしました。これはnoise CHOPで移動経路を作り、一番先の動きを2番目の位置から見るカメラワークの手法を紹介しています。今回オブジェクトこそ違っていますが、視線の移動方法はこの内容に従っています。何かを追いかける視線の作り方はゲーム等に使われているようです。プレイヤーがクルマを運転していて、先に走っているクルマを追いかける場面、飛行機を操縦していて眼前に敵の戦闘機を追いかける場面等です。
移動するオブジェクトを追いかける視線を作る方法
上に挙げた本に書いてある内容を詳しく解説するわけにはいかないので、ここでは結局何をしているのかだけを述べます。是非読まれることをお勧めいたします。まず何かが移動する軌道を作ります。本ではnoise CHOPを元にしています。オブジェクトの軌道は、オブジェクトの位置である(x, y, z)をtrail CHOPで横軸時間にし、それをlimit TOPのオペレータにアサインすれば描けます。次にカメラワークです。軌道の一番先にあるポイントを軌道上のどこかの位置から見る、という設定をすれば追っかけれます。カメラの機能であるcamera COMPにはLook atパラメータがあります。ここに軌道の一番最後の位置を設定します。そしてカメラ自体の位置を軌道上に設定します。軌道上のどこの位置を設定するかはtrim CHOPで決めます。変化が急すぎて見にくくなる場合がありますので、ゆっくり変化させるために、trim CHOPの次にlag CHOPを入れています。この構成は恐らく、何かを追跡する視線を作製する標準構成でしょう。
3体間の衝突回避問題への適用
2025.11.21のblog「3体間の衝突回避と発振」の中で、3体間に衝突回避の条件を入れ、移動範囲と反応の速さを決めるフィルタの設定を変えて、その挙動を観察しました。移動範囲とフィルタ機能で比較的大きく動きが変わること、特に移動範囲を狭め、フィルタ機能を無くすと、発振に至る現象を見つけました。この現象を追いかける視線から見てみるとどのように観えるだろうか、と思いました。この場合オブジェクトは球の形をした3体あります。3体間の振る舞い自体のプログラムは「3体間の衝突回避と発振」と同じです。追加した点は次です。一つのオブジェクトに着目して、その移動する軌跡を作製します。そしてターゲットにその軌道の先端、つまり選択したオブジェクトの現在の位置を設定します。そしてカメラは、その軌道の少し前の位置に設定しました。つまり、少し前の位置(少し過去)から現在の球を観測します。球は3つあり、それぞれ衝突回避の相互作用をしながら動いているので、常に動いている3つの球が観測されることになります。過去から現在の自分を観察するという視線はプログラムならではできることであり、興味深く思います。またオブジェクトが移動する空間も設定しました。空間の設定の手法は2025.12.09の「ISF(シェーダー)の利用」と同じです。ISFのサイトから得たシェーダーを、environment light COMPのパラメータであるEnvirronment Mapにアサインします。空間の形状は同様にsphere SOP(球)にしています。「ISF(シェーダー)の利用」の場合と違っている点は、この時は球の表面に貼った映像を外側から観察していましたが、今回は球を大きくして、内側から観ています。それでは作製した映像をみていただきましょう。
常に中心にいる球がターゲットです。発振時(映像では3つの球がある中心の周りで回転している状態)にターゲットを追いかけると、振動的にカメラがぶれます。これを防ぐため、発振時にはターゲットもカメラも直前の位置に自動的に固定するようにしています。また発振時に軌跡を表示すると3体の動きが見えにくいので、発振時には消しました。非常に「躍動感」のある映像が作製できました。これまで「躍動感」をテーマにしたことが無かったのですが、重要なテーマであると認識しました。視線を変えることでこんなに大きく違いがでるのは驚きです。参考のため、いつものように外から眺めた視線の動きを次に示します。
「躍動感」は随分と落ちます。2つの映像の曲はMAXによる自動作曲です。最初の映像は実際の映像から曲を作っています。ですので映像と音楽とは関係性があります。2つ目の映像は動きが少ないのでそのままでは曲になりません。そこで走行映像を使って作曲したものを当てています。この場合は映像と音楽との関係性はありません。
まとめ
2025.10.26のblog「フィジカル・インテリジェンス」では、装置が周囲環境を理解して、実体をその環境に適応しながら動かすようになることを述べました。この周囲環境を理解するには、一つは客観的な視線が必要ですが、もう一つは今回の様に、主観的な観た視線が必要です。今回後者の扱い方を多少な学ぶことができました。今後の「フィジカル・インテリジェンス」の検討に活かせると思っています。


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