初期の人工生命Conwayの活用について

人工生命

第1回目の投稿で「徒然:音楽 曲名Varying duration」の図はConwayと呼ばれています。そこでConwayについて簡単に述べ、このようなものをどう活用すれば人の心に働きかけることになるのか、についての意見を述べたいと思います。Conwayは初期の人工生命の代表で、「life game」、「2次元セル・オートマトン」等とも呼ばれています。私は人工生命に関心を持っています。人とモノとの間にフィードバックを作ることを研究しているわけですが、人工生命は人との関係性をつけやすい題材なのです。私はモノの代表として人工生命を扱っています。うねうねと動いたり、なんか生命的だな、と見えるモノに対して、人は反応しやすいように思えるからです。冷蔵庫とか掃除機とかを見ても、特別関心を持つ人は少ないと思いますが、変化したり動いたりするモノがあると、何だこれは、と思いやすいということです。こういったことが何故生じるのか、といったことに対して、進化論的な立場から原因を求める話は面白いですが、これもまたそのうちに紹介したいと思います。

Conwayは単純な規則を与え、そこから複雑な形状を生成していく数理モデルであり、Conwayが考案しました。方眼紙のマス目に相当する部分をセルと呼び、自分がセルの一つであったとすると、その周りのセルの状態で、誕生、生存、過疎、過密の4つのルールを与えます。これだけで、形状がどんどんと変化していくのです。驚きます。このシンプルな規則に対して変化してく様子の多さが、多くの方のインスピレーションを誘発しています。インターネット上に多くの記載があるのでこれぐらいにしておきます。MAXではすでにオブジェクト化されており簡単に使えます。さらにGPUを使った高速演算できる手法がYouTubeで紹介されております。https://www.youtube.com/watch?v=1GkfeL2Gr_c

私はこのYouTubeをまねてConwayを実装しています。前置きは長くなりましたが、Conwayの応用について説明いたします。2つ考えました。一つは、文様の作製に活用する案と、音楽作製に活用する案です。今回はVarying durationの関連から、音楽作製の活用について説明いたします(この記事の表題の画像(アイキャッチ画像)はConwayを活用して作った文様の例です)。

Conwayを映像に対して適用すると、輪郭を抽出し、映像を止めると、その輪郭にできたセルを基に、life-gameがスタートします。ですからこの輪郭がどんどんくずれて変化していきます。例えば一定の速さで1~16を数え、1になった時に動画を止めるとすると、輪郭線上にできたセルを基にして、life-gameがはじまり、次の1の時に再度、輪郭線が作られ、ライフゲームが再スタートします。つまり、こうすることで、輪郭線ができて広がる、できて広がる、を周期的に繰り返すようにできるわけです。私は映像を基に音楽を生成するシステムを作っています。詳細はまたいつか説明したいと思いますが、「特開2019-020638 音楽生成装置、音生成制御プログラム」が方法を記載した代表的な文献です。自動作曲は人とモノとがフィードバックする典型的な例だと思っています。例えばこの装置をつけてクルマを運転すると、運転に従って風景は変わるので、曲も変化していきます。そうすると、こんな道ならこんな風になった。もっと別の道ならどうだろう、といったように気持ちが誘発されるというわけです。これは人とモノとの間に、相互作用する関係性が、この装置があるから作られたと言えます。私はこうした、人とモノとの間にフィードバックが生じる装置を作っていきたいと思っているのです(家で行う活動としてはプログラムがメインとなりますが)。
Conwayの活用についての話にもどします。例えば音楽を作る元となる映像がクルマの走行映像であったとすると、これにConwayを上述したように周期的に適応し、それを元の走行画像と重ねると、次のような画像ができます。

例えば音楽の小節目の最初に画像を止めて輪郭線抽出から、ライフゲームをはじめるようにすると、いつも小節の初めに輪郭線ができて、徐々に変化していく映像が、走行映像に重なることになります。こうすると、音楽になんとなくリズムがつくようになります。明確にリズムをつけたいなら、ドラムパターンとか、アクセントをつける(ベロシティをそのタイミングで上げる)とかで行うことができます。これが通常と思いますし、適していると思う場合が多いです。ただつねに変化するが全体的にはリズムをつけているのかな、みたいなニュワンス作るのにはConwayは適していると思うのです。
この現象はもう一つ私の興味を引きつけました。映像においていうなら、Conwayを重ねることはノイズのようなものです。映像を見にくくしています。しかし、これを音楽の立場からみると、効果的な案件になっているということです。これは、ノイズのようなものが常に悪いわけではないということです。映像ではノイズのようだが、音楽に変換した時には意味を持つというわけです。生命はこうした現象を使っているところがあるのではないのか、と思えてなりません。これを見つけ、装置に応用するのも研究課題の一つです。何かお気づきのことがあれば、是非教えてください。
最後の、Conwayを活用して作製した曲をアップしておきます。曲名はNostalgicです。

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