モノ側の相転移と人側の相転移

相転移

はじめに

最近のblogでは相転移を扱ってきました。この過程で相転移には「モノ側の相転移」と「人側の相転移」があることに気づきました。そこでこれらの2つの相転移について考察してみます。

モノ側の相転移

これは通常の相転移のことです。Monogokoroで扱ってきた内容では、「相転移と志向性」、「ストレンジアトラクターを使った確率共鳴」、「3体間の衝突回避と発振」等がそれに当たります。これらはモノであるオブジェクトの状態がパラメータの値によって急に変化する現象を述べてきました。これを見て人は、、オー沸騰したとか、繋がったとか、発振したとか、その変化に驚きます。しかしモノの変化として捉えています。一つだけ例を挙げておきます。

これは「SDFによる2つのシステムの合成」の最後に挙げた例です。2階の線形微分方程式と衝突回避する3体のポイントとの合成を扱ったモノです。中心にかたまりその周りをまわる規則的な変化から、ランダム的な変化へ相転移し、また戻ります。3体間の衝突回避モデルが、発振している場合とそうでない場合の転移がSDFに反映されています。状態が変わったことを認識しますが、SDF空間そのものから私の思考は出ていません。私自身はこの現象を外から観察しています。

人側の相転移

SDFの空間に何かを入れようとおもいました。行く行くは場と相互作用させたいところです。図形を入れた所、SDF空間の変化よりも違う側面が立ち上がりました。そこでより明確になるように、以前に作製した宇宙駆逐艦雪風を図形に変えて配置しました。宇宙駆逐艦雪風は次の形です。

これをSDF空間に配置した映像を示します。

この映像を見ると、SDF空間の変化がどうこうというよりも、雪風が場に襲われて大ピンチで、脱出しようとしていることに意識が移っているのに気づきました。これを物語と言うなら、SDF空間をどうして作ろうかとしていた私から、雪風を配置することで、雪風の物語に意識の対象が移ったのです。これは人側の相転移と言えるのではないでしょうか。

もう一つの例は、先回のblog「工学と文学あるいはアートとの往来」で挙げた「閉じ込めららた方程式」の例です。これを再録致します。

これは2階の線形微分方程式のSDFとトーマスのストレンジアトラクターを球に閉じ込めた映像です。これを見た時も、微分方程式をどうこうするという考えよりも、これはアートで永遠性を主張できるな、と思いました。これも人側の相転移です。

ここで2つの例の共通点を挙げるとすると、関係性が導入されたことが挙げれます。最初の例はSDFと宇宙駆逐艦雪風との関係、2番目の例は球に閉じ込めたことで、内外が分かれた関係になり、2つの微分方程式のオブジェクトが同じ所にあるという関係が生じました。これらの生じた関係性によって、志向性が勝手に動き、現象を外から観ていた私の意識は物語やアートへ転移したと解釈しました。関係性に意味を読み取ろうとするのは人の性質です。

このように、関係性を読み取ることで、志向性が変わるのは、現象学的ですが、私の中のシステムが組み変わると言う点では「オートポイエーシス的」と言えます。こういうことは日常的に、しかも頻繁に起こっているように思います。例えば、私の部屋からは前の家が見えます。今日は洗濯物が干してあります。これだけて、「家」というモノに対して、家そのものだけでなく。「人がいる」ということを感じるようになります。また私の部屋には本棚がありますが、漠然と本棚があるな、というところから、どんな本があるのかに注目すると、何に興味を持っている人だろうとい言ったように、本棚ではなく、それを持っている人に志向性が向くでしょう。日常的と言っているのはこのようなことです。

更に拡張してみましょう。上の例では、モノを見て私の志向性が数学や工学から物語やアートに相転移したことを述べました。おそらく仏教が言っているのは、モノではなく私自身を観るということでしょう。そうすると現在の私が過去と違う私として認識でき、相転移していること、常に新しい自分が作られている、ということを知ることになります。そうすることで、過去の自分の執着から離れられるということを言っているのではないでしょうか。モノを観るのではなく、自己を観ることで、自己の再解釈として相転移が生じます。モノの相転移からこうした考えは一見離れていますが、転移した私が続いて転移することで思わぬ遠くへ達する場合があります。

まとめ

モノが相転移する現象から、人側も相転移する話に拡張しました。そしてそれは主に関係性に志向性が向く場合に生じるのではないか、という意見を述べました。これは創発現象でしょう。創発というのは、個々の要素にはない性質が、関係の構造から立ち上がることです。人側の相転移は、モノの関係構造が人の内部で新しい意味を持つようになる現象です。モノの現象から物語やアートに意識が立ち上がることや仏教に意識が向いたことを指しています。現象に対して関係性を意図的に入れることで、人側の相転移を促せることは、創発を促せることと類似しており、思考の停滞を防ぐ重要な方法になると思いました。

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