はじめに
ストレンジアトラクターから単振動へ、単振動からストレンジアトラクターへ、の相転移を扱います。これまで述べてきたコントロールと合わせると、相当にコントロールする手段を得てきました。列挙すると、
1.2026.05.11 「ストレンジアトラクターを使ったノイズ誘起遷移」
2.2026.05.12「ストレンジアトラクターを使った確率共鳴」
こらら2つは、バラメータbをコントロールする例でした。
3.2026.06.08及び2026.06.09「ストレンジアトラクターのコントロール1及び修正」
4.2026.06.11「ストレンジアトラクターのコントロール2:状態遷移」
これらは、微分方程式を解くフィードバック系の中にmagnet SOPを入れ、metaball SOPにより、粒子をコントロールする(場の地形を一時的に変える)例でした。
5.今回「ストレンジアトラクターのコントロール3:「相転移」及び「カオスと生命」」
では、微分方程式のフィードバック系の中にtransform POPを入れ、Rotateパラメータを変えることで、ストレンジアトラクターと単振動の相転移を実現します。
これらを学ぶ中で、「現われ」の背後に「場」がある構造を見ています。場の性質と生命のホメオスタシスとを対応させ、生命の中にカオスが見て取れることを述べます。
カオス・単振動の相転移
カオスがカオスでなくなる例は、2025.05.07「カオス」の「パイこね変換」の節で少し記載しています。異物の初期位置の僅かな違いによって、カオスになったりそうでなかったりします。これはカオスの分岐現象です。今回の話も分岐現象ですが、ここでは相転移と述べています。
先回はストレンジアトラクターを描く微分方程式のフィードバック内にmagnet SOPを入れmetaballによって、粒子を弾くことで、ストレンジアトラクターの領域を変化させました。今回はこのフィードバックシステムの最後に、transform POPを追加しました。ですからtrensform SOPもフィードパック系の中にあります。それでは作製した映像を見てください。
ストレンジアトラクターから縦長の単振動に転移します。その後metaballを下側に登場させ粒子を弾き上側に単振動を作ります。そして次に上側にmetaballを登場させ、粒子を弾き下側に単振動を作っています。その後metaballを無くし、縦長の単振動に戻します。そして最後にそれをストレンジアトラクターに相転移させています。このように、相転移が実現できました。ここで非常に注意深くみていただくと、最初のストレンジアトラクターと最後のストレンジアトラクター、最初の縦長の単振動と、後半の縦長の単振動では、軌道こそ同じように見えますが、粒子をよくみると、移動する黒い場所が違っていることがわかります。粒子が通る軌道はほとんど似ていますが(厳密には軌道も違っています)、軌道のある場所を通るタイミングは前の状態とは違っています。これはカオスの性質です。微分方程式は同じなので、アトラクターは同じですが、粒子が何時そこを通るのかは変わっているのです。縦長の単振動はカオスではありませんが、軌道はストレンジアトラクターから変化しているので、ストレンジアトラクターの粒子の流れを引きずっています。このプログラムは途中でリセットできますが、変換させて形状を作ったアトラクターと、リセットしたものでは、軌道は同じように見えますが、粒子の通るタイミングは違うことになります。
それでは、フィードバック内に入れたtransform POPのパラメータについて説明します。相転移さするのに使うパラメータは、Rotateパラメータのz軸だけです。0, 0, 0がストレンジアトラクターで、0, 0, 3にすると、縦長の単振動に相転移します。線形システムでは、フィードバック内でRotateパラメターを使うとグルグル回りますが、そうでない場合が生じるのがカオスです。実際0, 0, 45のように、値を大きくすると回転しながら小さくなっていきます。これらの現象のイメージは次のようなことでしょう。ストレンジアトラクターは有限の体積に押し込めらています。これは伸びる方向と縮む方向とのバランスで、それが折りたたまれて形状を作ってると想像できます。パイこね変換と同じです。小さな回転をここに入れると、伸びる方向と縮む方向を少しずつ混ぜていることになります。そうすとカオスのバランスが崩れる場合があるということです。これが相転移であり分岐です。カオスを維持できなくなって単振動に落ちます。線形な操作では回転し続けるわけですが、そうならないのは、アトラクタの安定方向に引き戻されるからです。回転角が大きいと引き戻せる範囲を超えてしまうので回転することになります。。角度を0~45°などの範囲でスイープすると、分岐の状態が複数見つかるかもしれません。
カオスと生命
アトラクターの形をmetaballで変えたり、Rotateで変形させても、作用を無くすと元の軌道に戻ります(微妙には違っています)。しかし軌道は元に戻るが、粒子が何時そこを通るかは変わっています。つまり、保全される軌道と保存されない時間性があるのです。これがカオスの特徴です。軌道が保存される性質は生物でいうところのホメオスタシス(恒常性)に相当します。保存していない部分は生物では、分子や細胞です。これらは入れ替わっています。細胞は入れ替わるが身体の形状は維持されます。この現象はカオスと似ています。
また、例えば手を少し包丁で切ってしまっても、傷は元にもどります。細胞が再生しているわけですが、カオスの場合、粒子が減らしても軌道を回っており、そこに粒子を増やしても、その軌道を維持して元の様に見えます(この時も軌道を通るタイミングは違っています)。これも再生現象と似ています。
これらのことも、「場」の考えを使うと共通して見れます。ストレンジアトラクターの場に相当するのは微分方程式です。この「現われ」が場に粒子を入れたときにできるストレンジアトラクターです。metaballやrotateは一時的に場を変えたことに相当しており、除くと元の場に戻るので、似たような「現われ」になるのです。生物のホメオスタシスも、その背後には場に相当する(微分方程式に相当する)働きがあります。この働き(場)によって、細胞が入れ替わっても同様な機能を発揮するのです。傷が治ったり、尻尾が再生したりするのも、背後には場(微分方程式に相当)の働きがあります。
まとめ
微分方程式を解くフィードバック系の中にRotateを入れることで、ストレンジアトラクターと単振動の相転移ができることを見つけました。これまでMonogokoroで書いてきたストレンジアトラクターの記事とを合わせると、相当にストレンジアトラクターをコントロールできます。この背後には「場」と「現われ」の構造があることを指摘し、この関係は生命と共通していることを述べました。恐らく、ストレスや病気、老化、意識の変容、等もカオスの分岐、相転移として解釈可能でしょう。
補足
「ストレンジアトラクターを使ったノイズ誘起遷移」や「ストレンジアトラクターを使った確率共鳴」は微小信号の検出に使える可能性がありますし、「ストレンジアトラクターのコントロール1及び修正」と今回の相転移は、異常検出に活用できるでしょう。こうしたことだけでなく、述べてきたように、カオスは生命とも関連があります。残念ながら今の私は、この関連を指摘できても、だからどのように役立つ、ということが思いつきません。ご興味ある方おられましたら、是非議論させて下さい。
最後に随分飛びますが、働き(場)があって、「現われ」があるとする構造的な考えは、ウパニシャッド哲学と同じです(2025.12.19「梵我一如1」, 2025.12.21「梵我一如2」)。「働き」はフラウマンと呼ばれています。2千数百年前の思想とカオスとの間に共通点があるのも驚かされます。

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