はじめに
2階の線形微分方程式は必ず学ぶ内容ですが、電気回路ではフィルタの、力学ではダンバーのカットオフ周波数を変えるぐらいが実例でしょう。しかしこれは判別式がゼロ以上になる場合で、これまで話してきた相空間を描く場合、即ち判別式が負の場合ではありません。このため、ボード線図のほうが便利です。相空間が重要になるのは、電気回路では発振やシステムが不安定になるような場合です。実際には発振も負性抵抗とフィードバック理論で設計することが多く、微分方程式から設計することはほとんどありません。しかしそのことは微分方程式の係数を変えていることにと同じだ、という場合はしばしばあります。ここでは、2階の線形微分方程式の係数を直接コントロールする例を紹介致します。また先回のblogやその前の「微分方程式1,2」のブログで、相空間や固有値について個別に触れてきました。書いていて「相空間と固有値」との関係も述べておく必要があるな、と思ったしだいです。学生にもどった気分です。しかし現代ではTouchDesignerのようなプログラムがあり、随分と便利になったと感じました。
微分方程式のコントロール例
「微分方程式2」では2階の線形微分方程式が相空間を回転しながら、大きくなっていく場合(発散)と小さくなっていく場合(収束)、そして円になる場合があることを示しました。これだけではコントロールというほどではありません。しかし、どんどん大きくなっていって発散するところを、収束に転じたり、在る所で円にすることができれば、コントロールしたと言えるでしょう。例えば発振器で発振の振幅が変えることができれば、変調やAGC(automatic gain control)に使えます。力学の分野ではダンバーやアクティブサスペンション等があるでしょう。また生体のリズムも関係しているかもしれません。このように微分方程式はコントロールの基礎でもあります。
2階の線形微分方程式のパラメトリック表示を示します。

この図において、aを変えることで発散と収縮をコントロールしてみましょう。a=-0.2で収束していき、相空間での距離が0.2になった時に a=0.2にして発散に転じさせ、距離が1.5になった時のa=-0.2に変わるようにコントロールしました。プログラムの主要部分は「微分方程式2」と同じです、chopで距離を検出してaの値を切り替えています。それでは映像を見てください。
このように発散と収束を繰り返します。次は発散していきながら、距離が1.5になった時点で定常状態になる場合です。
このように、途中から振幅(距離)一定にすることもできます。
2階の線形微分方程式は発散と収束、定常状態がありませすが、それは今回のようにパラメータを変えることによってコントロールすることができます。
相空間の回転は発振(振動)を表しているので、これを整流しローパスフィルタでDC化すると、外部へのコントロール信号に使うこともできます。
相空間と固有値の関係
結論から先に述べると、2階の線形微分方程式の解は

です。σが減衰を表し、ωが回転を表しています。このλが実は固有値です。
相空間の(x, v)ベクトルでは

のように書けます。この式のように書けるλ(固有値)があることが定義です。即ち自身(x,v)に何かの操作Aをした場合、それは自身のλ倍(固有値倍)のところに移されることを意味しています(ただしλは複素数)。より具体的にいうと、相空間上で初期値が時間に伴ってどこに移されるかを示しています。そしてxは位置、vは速度ですから、相空間で原点からx軸に離れていることは位置エネルギーを示し、v軸に離れていることは運動エネルギーを示しています。つまり原点からの距離は全エネルギーを表しています。時間にしたがって、軌道が大きくなる発散、次第に小さくなる場青が収縮、そして、単振動のように定常状態を保つ場合があります。
このことを数式の観点から見てみましょう。
2階の線形微分方程式は

のように書けます。パラメトリック表示にすると

です。これに記号をあわせると、➀式は

になります。

とおくと、

なので、➂式は

となります。
これからλは

と求まります。この段階ではλが固有値であるとはいえません。微分方程式から求めたλです。ここでλが複素数となるためには、判別式が負になる必要があります。

判別式がゼロの場合はx=1となるし、判別式が正の時はλは実数となるのでxは振動することはありません。抵抗があるバネの位置が典型的な例で振動することなく次第に減衰する場合です。x-vの相空間を問題にする場合は、判別式が負になる場合です。この時λは次のようになります。

次に➁式のパラメトリック表示の形式を行列で表すと

になります。ここでこの行列が固有値の関係が成立すると仮定します。固有値の関係というのは

でしたね、そうすると、

として書けます。固有値を求める固有方程式は

ですので、

これを求めると、

になります。
この⑦式は、微分方程式から求めた➃式と同じです。従って微分方程式から求めたλは固有値あったことがわかります。
以上からこの節の冒頭で述べた結論、x=exp(λt)のλが固有値で、それはは複素数であることが分かります。複素数になるということは時間に伴って回転することを示しています。これをあらためてかくと、

となります。固有値λは次の2つの関係がありました。

ここから、

と求まります。このことから、


この式からx,vも
![]()
を包絡線とする関数になります。xの振幅は位置エネルギーをvの振幅は運動エネルギーを表すので、相空間上の位置はエネルギーを表していることになります。
まとめ
2階の線形微分方程式はまず判別式によって分けられます。判別式がゼロ以上の場合は振動現象がありません。この場合は主にボード線図を使って解析することが多いです。代表的な例としては減衰酢するバネの位置があります。判別式が負の場合、振動現象が現れます。この時、その振動の状態がどうなるのか、つまり定常状態なのか、発散するのか、収束するのかが固有値によってきまります。固有値は相空間上の位置(状態)が固有値倍されることを表しています(ただし固有値は複素数で回転を含みます)。定常状態の場合は固有値の大ききが1、発散するのが1以上、収束するのが1以下です。xとvの相空間はxとvの時間的な動きを表します。位置xの振幅は位置エネルギーに対応し、vは運動エネルギーに対応します。従って相空間は振動のエネルギーの変化を表しています。微分方程式の係数を変えることで、微分方程式で書いたシステムの状態を変えることができます。特にaはxとvの包絡線に直結しています。このためこのパラメータを変えることで、収束、発散、定常状態をコントロールすることができます。この例を示しました。
補足:
Monogokoroではストレンジアトラクターも「微分方程式1」や2025.07.07の「カオス」で紹介してきました。こうしたストレンジアトラクターに対して、コントロールしようとする人は少ないのではないでしょうが、計算上はパラメータを変えることでコントロールでき、奇妙な動きを創り出すことができます。
線形微分方程式では、固有値は1か、1より大きいか小さいかしかありません。これは定常状態か発散か収束かを表しているので、固有値の値は未来予測を表しているとも言えます。このことを知っていると、収束するかと思うと発散し、発散するかと思うと収束するストレンジアトラクターのストレンジさに気づきます。
固有値のエネルギーの概念は量子力学に展開され、今回の発散・収束のように連続した変化が、飛び飛びのエネルギー準位になります。
私は相空間の映像に魅力を感じていますが、それは自然界の現象の多くが微分方程式で表され、その中で人も生きてきたことに関係していると思います。また、人の身体の動きは力学的で微分方程式的な動きをしています。また脳も予測をしており、これに相空間的な見方、固有値的な見方をしているのではないか、という考えもあるようです。これが渦や流れそのものや、それを抽象化した映像に、人が自然を感じる理由の一つであるかもしれません。

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