はじめに
2026.05.27のblog「サイズが変わることによる錯覚:人の特性の考察4」で、サイズが変わることによる錯覚を扱いました。人はオブジェクトのサイズが急に変わることを想定していません。このためサイズの変化を高さの変化に感じるという内容でした。実際のオブジェクトは同じ平面上にあり、サイズが変化しています。この時に示した映像を再録致します。
サイズの変化が高さに変換される現象に興味を持っています。また常に海の上にオブジェクトがあるように見えています。これを作製した際に、「こういう場合はどうだろうか」、というように幾つか思うことがありました。それを補足として述べたいと思います。
波紋を付けた場合
3つとも波紋を付けた場合
最初に思ったのは、3つのオブジェクトに波紋が纏わりついている場合、オブジェクトは水面にあり空中にあるようには思わないだろうと考えました。そうするとサイズの違いはどう感じるのだろうか、ということです。試したのが次の映像です。
3つのオブジェクトはそれぞれ波紋を纏っています。予想どおり、もはや空中に浮かんでいるとは思いません。そしてサイズの変化は、水の中から表面に出ている量の違いとして感じ、オブジェクトは上下方向に動いていると感じます。波紋とサイズの変化が矛盾しないように勝手に解釈が生じます。
一つだけ波紋を付けた場合
それでは次はどうでしょうか、一つのオブジェクトだけに波紋を纏わせました。2つのオブジェクトには波紋がついていません。
どのように思われましたか?私は波紋のついたオブジェクトは水面にあり、このオブジェクトは上下方向に動くために、水面に出る量が変わっているように見え、他の2つは空中に浮かんでいて、上下方向に動いているように見えました。これも現象を矛盾なく説明するための解釈と言えるでしょう。
サイズが大きくなった際に波紋が現れる場合
次はオブジェクトのサイズが大きくなった場合に、波紋がでるように調整してみました。つまり、空中に高く上がった場合に波紋がでる場合です。海は下側にあるわけですから、高く上がった時に波紋がでるのは、明らかに矛盾することです。この場合、どう解釈をすることになでしょうか?次の映像を見て下さい。
これは意外な結果となりました。「空中の上側に見えないが層があり、オブジェクトが上昇すると、その層に接触することで波紋ができる」、と勝手に解釈が浮かびました。上に層が在るということは、まったく想定していなかったことです。波紋が生じることを矛盾なく解釈させるにはそうである必要があったわけです。一瞬でそう解釈させるとは人は凄いです。
作製している私でさえ、映像を見る限り、瞬時に矛盾なく説明できる解釈の仕方で映像を見るようです。これは勝手にそうなるわけで、人の特性と言えるでしょう。そしてこの力は相当に強力です。
波紋の作り方
上の映像を見ていただくと、オブジェクトの形が波紋を作っているように見えているのではないでしょうか?しかし実際の波紋はオブジェクトの形から作製していません。オブジェクトの位置と、互いの距離の値によって作製しています。オブジェクトの大きさは、オブジェクトをA,B,Cとすると、それぞれA-B間の距離、B-C間の距離、C-A感の距離に比例しています。波紋のサイズも同様にこれらの距離データから決めています。このためオブジェクトのサイズと波紋が対応します。これはオブジェクトの位置とサイズの関係性を波紋に反映させたということになります。Monogokoroで使っている言葉ではプロシージャルです。
波紋の作製の仕方は、TDSW YouTubeチャンネルの「KOHUI X TDSW Create an audiovisual environment in a virtual space with Kohul」の一部を参考にして作製しました。波紋はフィードバックループをつかって作製します。そのループ内にnoise TOP, displace TOP, そしてslope TOPを入れるのが特徴です。通常は同心円になってしまうところを、noise TOPとdisplace TOPで円を凸凹させ、slopeトップでグラデーションをつけ、その後edge TOPで輪郭を取ることで、サイズの違う複数の波紋を作っています。大変賢いやり方です。特にslope TOPの使い方は知らない手法でした。私はこれに波紋の数を増やすためにサイズを変えた波紋を合成しています。
その他の例
次の映像は錯覚を作ろうとしたわけではありません。3体間の衝突回避からオブジェクトを作っているので発振現象が作れます(2025.11.21「3体間の衝突回避と発振)。これを試してみました。
中央で3つのオブジェクトがグルグル回転している状態から、広がり自由に動く状態へ、またその逆へと変わります。これは水面での動きに見えます。新しく紹介した映像全てそうですが、音に注目して聴いていただくと、オブジェクトのサイズが大きいと音も大きく、サイズが小さいと音も小さく、映像と同期しています。これは音を映像と上で述べたオブジェクト間の距離の値から作製しているからです。audioosc CHOPによるWhite noiseを映像から作製した信号で変調し、距離データの平均でcross chopにより3つの音ルートの混ぜ具合をコントロールしています。これは、2026.01.19「映像による音生成3:炎と液滴」の「炎と音の作製」の節で使った方法の応用です。
まとめ
オブジェクトのサイズが変わることを高さが変わったとみなす錯覚現象を更に考察するため。波紋を付けた映像を作製しました。人は、どういう状況を表す映像かを、見た瞬間に矛盾なく解釈する状況判断をするようです。作製した本人も、ひょっとしたら高さを変えたのではなく、大きさをかえたのではないか、波紋は見せかけるために後からつけたのではないか、と言った可能性は、そうしたことを考えようとしなければ立ち上がりません。また、サイズが大きくなった場合に波紋が生じる場合では、上側に何かしら層があってそれに衝突したと解釈しました。思いもよらない解釈が勝手に立ち上がりました。矛盾なく解釈しようとする力は相当に強力なようです。映像をみながら脳を測定すると、発火する場所の違いとして何かわかるかもしれませんね。

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