はじめに
「ストレンジアトラクターのコントール」を7回に渡って述べ、「粒子を使った電子の道作製」を4回に渡って述べてきました。ようやくこうした内容が意味を持つのではないかという案件を思いつきました。しかし今のところ、価値はなかったな、となるかもしれません。今回は記憶に関して空想したので、その内容について述べます。
着想
記憶がニューロンの発火パターンに関係しているという内容を読んだことがあります。しかし発火パターンで記憶を思いだすとすれば、その発火パターンに対応した記憶が脳のどこかにあることになり、出来事をそのまま記憶しているのではない、という考えと矛盾しています。情報伝搬経路である発火パターンが、極めて多く作れるであろうことは、「粒子を使った電子の道作製」を検討して納得しました。このパターンに対して記憶がどう蘇るのか、ということについてですが、案を思いつきました。構造を単純なモノに変えて縮退させます。これは「ストレンジアトラクターのコントロール」そのものです。私はトーマスのストレンジアトラクターのフィードバック内に、metaball SOP ー> magnet SOP, transfrom POPによるRotateパラメータ, twist POPによりStrengthパラメータ, を使って、ストレンジアトラクターがコントロール可能なことを述べてきました。ストレンジアトラクターから単振動、そして点への縮退等です。またある範囲に縮退させた状態から、ストレンジアトラクターに戻すことができることも見つけました(今の所、一点に縮退した場合、ストレンジアトラクターの軌道はもどせません)。ストレンジアトラクターから縮退、縮退した状態からストレンジアトラクターの変化はドラスティックです。これが記憶に関係しているのではないか、と直観しました。保存されるモノは、記憶するデータでもなければ、軌道そのものでもなく、軌道を生成する力学構造です。脳の記憶も、体験そのものではなく、体験を再構成する構造ではないのか、これが従来との違いです。つまり「記憶=データではなくアトラクター」なのでは?アトラクターを再生できるということは、地形を保存していることに相当します。軌道はその地形に沿った動きです。人も体験そのものを記憶しているのではなく、その体験時の地形を縮退から戻しているのでは、と考えました。そして、その構造を戻す鍵が発火パターンです。空想もなかなか面白くなってきました。
ストレンジアトラクターを使った記憶の仕方
それでは、考えた記憶の機構について、作製したプログラムを使って述べます。
トーマスのストレンジアトラクターを例にしています。最初はb=0.19で両極間を粒子が行き来できるギリギリの状態に設定しています。次にb=0.34にして、両極へ粒子を移動させます。両極の円は次第に小さくなり粒子は縮退していきます。その後フィードバック内にあるmetaball SOP ー>magnet SOPを作用させ、粒子を一方に集めます。metaballのWeightは2、Uniform Scaleは3.5です。metaballの位置は(0,0, -3)です。一方に縮退するのは、左下側の地形をmetaballによって変えたためです。その後、metaball Weightを0にして、その効果を除きます。この時粒子はそのままです。これはmetaballが右上の地形を変えてはいないからです。その次にb=0.1として、粒子が広がる状態を作ります。そしてb=0.19に戻すと、最初の状態に戻ります。b=0.1の状態を入れるのは、一旦粒子を広げ、b=0.19にした際に最初の状態に戻る時間を短縮するためです。ここで、最初の状態に戻ると書いていますが、トーマスのストレンジアトラクターはカオスです。ですので粒子の軌道は同じに見えますが、粒子そのものが同じ場所を動いているわけではありません。これはカオスが初期値の違いで同じ時間にその場所を通らないのと同じです。
記憶と重ねて話すと次のようになります。最初のトーマスのストレンジアトラクターの状態が、体験している時の状態に相当します。体験が終わると、それが縮退するのではないか、というのが空想です。それが一つのアトラクターに縮退した状態です。これを「アトラクターの種」と呼ぶことにします。記憶の種がある領域に縮退しているということは、この時の構造はトーマスのストレンジアトラクターの構造ではないことを現わしています。ある所に縮退するのですから、そこにポテンシャルの低い所がある、そういう構造で記憶されるということです。次に記憶を呼び出すことを想像します。ニューロンの発火パターンによって「アトラクターの種」が呼び起こされるのではないかと思っています。その時「アトラクターの種」が戻されるということです。この記憶の仕方はカオスですから、粒子の位置を含めると前とまったく同じではありません。何が戻ったのかというと、体験時の地形がもどったのです。この地形の戻りが、次の節で述べるように、過去と現代とを混ぜることになるのではないかと考えています。
次にもう一つ、作製した映像を見てください。
これは、先ほどのb=0.34にするところをb=0.5にした場合です。0.5にすると2極が点のようになります。強く縮退した状態です。この状態からb=0.1にすると縮退は解けますが、粒子がバラバラになっている数は最初の映像より少なくなっています。また右上の一か所は動かない所ができているようです。最後のb=0.19に戻した時に、粒子は元のトーマスのストレンジアトラクターの軌道を動いています。従って地形は戻っています。しかし粒子のバラバラさが戻らず、印象としては違った感じに見えます。ここではもう示しませんが、回転やtwistを加えると、1点に縮退させることもできます。そしてこの場合、その後ほとんど縮退が解けない現象が発生します。この時も地形自体は元に戻せ、縮退した一点がストレンジアトラクターの軌道をトレースします。
これもまた空想ですが、粒子の数が元に戻らないのは、過去の記憶の曖昧さを示していると解釈できるかもしれないと思っています。つまりあまりに縮退すると記憶が減るというように解釈できないかと思っています。
それでは、記憶を戻そうとするきっかけ、ここでは縮退している状態から元に戻る切っ掛けですが、それがニューロンの発火パターンではないか、とこれもまた空想です。その例が、先々回の「粒子を使った電子の道作製 ステップ4:粒子の道」です。その時の映像を再録しておきます。
今回のプログラムの主要部分を述べておきます。「ストレンジアトラクターのコントロール」のシリーズで述べてきたことと同じですが、今回はbとmetaball SOPのWeightパラメータしか変えていないので簡単です。

point generator POPで粒子を発生させ、feedback POPとnull POPの間にフィードバックさせるオペレータが入っています。math mix POPがトーマスにストレンジアトラクターの微分方程式を書く部分です。pop to SOPとsop to POPの間にmagnet SOPが入っています。このmagnet SOPにポテンシャルを与えているのが、metaball SOP, transform SOPです。POPにmegnetのオペレータが無いのでSOPに変換して、そしてPOPに変換する操作が入ります。POPでできるように改善していただきたいところです。bとmetaballのWeightパラメータを変えるのが、2つのconstant CHOPです。magnet SOPはアトラクターを一つにする時に使いました。
「アトラクターの種」から構造を復元する意味
今回は空想に空想を重ねて、記憶について考察しました。要点はモノの位置とか場所とか、イメージとか、そういったことを記憶しているのではなく、体験した時の構造、それを保存しているのではないか、というのが一番の主張です。そして読みだすのは構造です。その時正確に読みだせた場合は、粒子の数とバラケ具合が最初に戻ることだし、少ない粒子になったり、粒子のバラケ具合が少ない時、記憶の曖昧さに関係しているのでは、と考えています。何故呼び出すのが構造なのかという理由が大切です。それは構造であれば、過去と現在を混ぜることができるからです。復元された構造に現在の粒子を入れると、その構造が示す軌道に粒子は従うことになります。現在と混ざるというのは、過去から呼び出された構造に今現在の構造が重なることで、地形が変わることではないか、と思っているのです。このため、過去の解釈も変わるし、現在も過去の影響を受ける、ということが説明できるのではないでしょうか。
まとめ
ストレンジアトラクターを種の形式で記憶し、それが記憶した時のニューロの発光パターンと似たパターンになると、種から構造が再現するのではないか、という仮説を述べました。この仮説では、現在の構造と復元された構造が混ざることで、過去の解釈も変わるし、現在の解釈も過去の影響を受けることが、説明できるのではないかと思います。なんども述べていますが、今回の話は全て空想です。
縮退して元に戻るとみなせる現象はAIと議論すると他にもあるようです。長くなったのその話は次回に致します。

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