「場を利用したベクションの表現」の補足:人の特性の考察2

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はじめに

先回の「場を利用したベクションの表現」を書いた後、クルマに対する応用例が思い浮かんだので補足致します。ベクションは人側の特性です。映像そのものにベクションという情報が入っているわけではなく、脳が勝手に作りだしています。プログラムをしているとたまに、プログラム側ではなく、人の性質だな、と思う場合があります。この例として簡単に言及したいと思います。

ベクションの追加例

自車の前方に3台のクルマがあります。それが自車に遠い場合と近い場合を場の形状変化で表した表現です。していることは先回の「場を利用したベクションの表現」と同じです。これらの基になるのが2026.04.05のblog「モノの形状が作る場:SDFの概念と可視化・・・」です。今回もfield POPにDistを設定し、即ちSDFの場を見せています。それでは映像を見ていただきましょう(アップする際に解像度が落ちるので見にくくなっております)。

白い円をクルマと見立てます。クルマが自身から離れている場合は中心から広がるベクションになっており、白い円が近づいてくるとサイズが大きくなるとともに場が変化し、3つが近くで並ぶ時に最も場の変化は大きくなっています。白い円が近づくとベクションの速度が遅くなって見えます。これは制御をしているわけではありません。SDFの場の相互作用でそのようになります。また白い円が近づくにつれて円同士が接近してくるように見えますが、錯覚です。円同士の距離は一定のままです。イメージが付きにくいかもしれないので、次に3つの円と、粒子の元となるgridとの関係を示します。

黄色いリングが場を作り、粒子を作るgridに近づき離れます。リングはfield POPによって、sphereの場がセットされています。grid POPからパーティクルが作られますが、リングがつくる場が近づくにつれて影響が大きくなる、という仕組みです。先回の「場を利用したベクションの表現」では、grid平面の中をsphereが動いていましたが、今回は離れる近づくの関係になっているところが基本的な違いです。

人の特性の考察

ベクションを感じることに対して、この情報自体は画像や映像側にはありません。人側が作り出している現象です。そしてもう一つ面白い点は、静止画を重ねてみてもベクションを感じません。動画であるから感じる現象です。Monogokoroでも紹介している「持続」が影響しています。似た現象ですが、性質が違うと思える現象に「だまし絵」があります。これも絵自体にだましている要素はありません。人側の特性です。この場合は静止画でも現れる現象です。静止画では表せないものと、静止画でも表せるものとがあるようです。この違いは、時間の流れが必要な知覚と、空間の推定が働く知覚があるからです。色に対しても人の特性による現象があります。物理的には光の波長の足し算ですが、人は「色の薄さ」「明るさ」「周囲の色」「その時の状態」等で違った色に見えます。同じRGBでも背景によって違う色に見える現象は典型的です。こうした現象は人側の処理を巻き込んで成立していると言えるでしょう。プログラムをしていると、こうした現象に出会います。脳との関係も多く研究されているようですが、残念ながら私が理解しているわけではありません。次の図は静止画の一枚です。

粒子の数が少ないのが意外に思われるのではないでしょうか、一瞬一瞬の情報はこうしたモノです。しかし人が感じるのは多くの粒子によるベクションです。最後に表紙の絵ですが、少し時間をづらした画像を5枚重ねました。これにより粒子の数は増えています。しかし動画と比較していただくと、重ねてもベクションの性質はでてこないことが分かります。

まとめ

粒子を放出するgrid POPに対して垂直方向に場を動かしました。クルマが自車に近付く・遠ざかるといったイメージに相当します。他車の動きを場の動き、ベクションの変化として表現しました。ベクションは時間の流れが必要な錯覚です。画像と比較すると、瞬間の画像では粒子も少なく方向性は感じられません、画像を重ねると粒子は増えますが、やはり粒子の方向性はありません。ベクションは人の知覚の現象です。人が加わることで成立する典型と言えるでしょう。

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